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三木屋旅館改修計画 四期工事・22号特別室

兵庫は城崎温泉に佇み、志賀直哉ゆかりの宿としても知られる創業300年の日本旅館「三木屋」。国の登録有形文化財にも指定され、その木造建築の随所に歴史ある趣を感じることが出来る。しかし一方で老朽化を避けられない部分もあり、宿では2013年より少しずつ改修計画を開始。施主は全体を通して、全面的なリニューアルというよりも既存の趣や建築当時の思考を活かした「更新作業」として改修を位置づけており、このプロジェクトではその考えに沿って、内湯、特別室、 客室、手洗、大広間などを段階的に改修している。

第四期工事となる今回の改修では、貸切風呂のほか、かつて皇族の方もお迎えしたという特別室「22号室」を改修。旅館の中で最も広い面積をもち、もともと和室が2部屋あった特別室を、和室と洋間、各1部屋からなる和洋折衷の客室として更新を行った。計画にあたっては、単純に和室だった場所を洋間に変更するのではなく、空間に様々なつながりを持たせることを意識した。例えば、既存の床を撤去して生まれた高低差を利用し、和室と洋間の間には縁側のような場所を設けている。和室から見たときの目線を下げ、寝室となる洋間の重心が低くなるよう考えた。また、各部屋それぞれにあった床の間は、和室側だけを残して洋間側はこれを撤去。ただし、構造的に必要な柱は新設しつつ、床の間に使用されていた板材は、縁側の板の間として再利用した。この他にも、玄関の踏み込みに使われていた一枚板は分割し、洗い出しの床と組み合わせて再度しつらえ直すなど、変化を加えながらも使用可能な素材を受け継いでいる。また、洋間の天井やベッドヘッドの上部には、古い洋館からインスピレーションを得てアール天井を取り入れた。壁と天井を一体的に左官材で仕上げ、空間全体に柔らかさを出した。さらに、縁側・洋間・和室という、それぞれの境界にあった欄間はガラスに差し替え、部屋としては分けながらも空間に繋がりを持たせている。同時に、ひと繋がりだった縁側の中央には敢えて間仕切り壁を新設し、洋間と和室、各部屋専用の縁側として再構成した。そして洋間側のみ、縁側にあった障子戸をガラス戸に変更。視覚的には庭への目線を確保しながらも、ガラスにサンドブラスト加工をかけてグラデーションをつけることで、開放感と落ち着きを同居させている。御影石で仕上げた脱衣所と浴室には、青森ヒバ製の浴槽とスチームサウナを新設。ベッドヘッドの照明や、ラウンジチェアはオリジナルで製作し、設備や家具も含めて部屋の雰囲気に馴染む仕様を考えた。

第一期工事:内湯(つつじの湯)改修
第二期工事:50号特別室改修
第三期工事:17号室(大広間)、その他客室改修
第四期工事:貸切風呂(来日の湯、二見の湯)改修

クライアント:三木屋
計画種別:インテリア改修
用途:旅館
期間:2022年2月~2022年9月
計画面積:106.7平米
計画地:兵庫県豊岡市城崎湯島
設計:ケース・リアル 二俣公一 下平康一
施工:川嶋建設
照明計画:BRANCH LIGHTING DESIGN 中村達基
家具製作・コーディネート:E&Y
撮影:水崎浩志

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