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割烹山映改修計画 一期工事

城山の麓にある「山映」は、鹿児島の郷土料理を提供する創業昭和8年の老舗割烹。現在の店舗は2代目が店を引き継いだ際に構えた木造2階建の建物で、建築から40年近く丁寧に使い込まれてきた。そして現在は2代目から3代目である若女将に世代が移っていく移行期にあり、今回そのような移り変わりに合わせて、厨房やトイレなどの水回り、メインのカウンタースペースから段階的に改修を行うことになった。
第一期の計画の軸となったのは、若女将が接客するカウンタースペースの背景。私たちは建物の外壁形状に沿わせて室内に型枠を組み、カウンター背面に新たにコンクリートのL字型の壁をつくり付けることを考えた。コンクリートの色には、初代女将が好んでいたという藤の花の淡い紫を採用。表面を叩いて凹凸のある仕上げとし、その陰影によって奥行きある表情をつくった。また、厚みのあるカウンターは熊本県産の一枚板のイチョウで、2代目が店舗を構えた当時に設えたもの。計画ではサイズなどの微調整のみ加えて、これをほぼそのまま再利用した。このほかにも、天井は既存の木張りを利用。一方でカウンター上部は網代で仕上げた下がり天井を新たに造作し、ここへ空調や照明などの設備機能を納めつつ、カウンタースペースの重心を低くすることで落ち着いた雰囲気を意識した。そして店舗の雰囲気に合わせてオリジナルで製作したカウンターチェアは片アームで、脚部も含めて非対称なフォルムとして構造バランスを考慮しながらその存在感を強めた。店舗には今後も少しずつ手を加えていくことが予定されているが、全てを一新してしまうのではなく、代々施主が受け継いで来たものや空気を大事にしながら、次の世代の新しさもあるグラデーショナルな移り変わりを引き続き計画していきたいと思う。

クライアント:割烹山映
計画種別:内装設計
用途:飲食店
計画期間:2019年2月~2019年10月
計画面積:62.56平米(改修面積)
計画地:鹿児島県鹿児島市城山町
設計:ケース・リアル 二俣公一 下平康一 古里さなえ
施工:ジーテック
照明計画:BRANCH LIGHTING DESIGN 中村達基
家具製作:E&Y
写真:水崎浩志

  • 01_1階平面図