大分・日田にある築約80年の日本家屋を、うなぎ店へと改修する計画。敷地は日田を流れる三隈川の合流地点が目の前にあり、室内にまで川の音が聞こえてくる心地よい場所であった。また、建物は施主が所有する前に熟練の大工によって一度リフォームされており、施主もその佇まいを気に入っていたことから、私たちは店舗としての機能を最低限整えることで全体を再構築することを考えた。
はじめに、既存の建物は住宅として使用されていたため、建物の目の前は塀や植栽で覆われており、店舗として使用するには前面道路から建物の気配を感じにくい状況にあった。そこで計画では、塀や植栽の在り方を整理しながら、あえて駐車場の背景として格子柵を新たに設置することにした。そして存在感のある暖簾と共にエントランスとしての構えを整えることで、通りからも店舗の気配を感じられることを考えた。また、アプローチの一部には新たにベンチを設え、休憩や待合いにも使用できるようにした。一方、室内は既存のキッチンスペースのみ拡張して、必要なサイズの厨房に改修。それ以外は、一部押入れを会計スペースに変更したり照明や設備を整えたりする程度にとどめ、全体は殆ど既存の間取りを利用することにした。そして、客席のための椅子やテーブルなどの家具をオリジナルで製作。今回のロケーションに合わせて高さを抑えた作りとし、視線を下げることで、流れる川の様子をより近くに感じられるような空間を意識した。
クライアント:鷺邸
計画種別:内装設計
用途:飲食店
計画期間:2020年11月~2022年2月
計画面積:133平米
計画地:大分県日田市隈
設計:ケース・リアル 二俣公一 下平康一 久保山実暉
施工:SONODA architect
照明計画:コイズミ照明
家具製作:E&Y
ディレクション:工藝風向 高木崇雄
暖簾・ロゴデザイン:望月通陽
コンセプトコピー:江副直樹
写真:水崎浩志