福岡に拠点を持つ和菓子店、「鈴懸」の麻布台ヒルズ店の計画。店舗の両面に出入り口がある特徴的な区画形状を活かしつつ、空間の雰囲気と共に和菓子と向き合えるような空間を考えた。区画は建物の内部通路と外部通路、2つの動線に挟まれた場所にある。計画ではまず、より大きなスペースが確保できる内部通路側にメインのショーケースを配置しつつ、外部通路から入店する場合もその雰囲気を感じられるよう、エントランスに玄関のような余白をつくることを考えた。一方、内部通路からのアプローチには、厨房の壁を取り囲むように大判の蛇紋石を貼り込み、店舗前面をグリーンの背景で印象づけている。全体の素材は、床を洗い出しで仕上げ、壁面には藁すさ入りの左官材を用い、見切りや巾木、建具などにタモ材を組み合わせて質感がありながらもニュートラルな空間を意識した。またショーケースにも同様にタモ材を用いつつ、腰はグレーのライムストーンで仕上げて耐久性を考慮している。空間全体に和菓子との相性の良さや適度な素材感を求めながら、必要な機能との合理性を図った。
クライアント:鈴懸
計画種別:内装設計
用途:和菓子店
計画期間:2022年5月~2023年10月
計画面積:108平米
計画地:東京都港区
設計:ケース・リアル 二俣公一 下平康一
施工:オブ
照明計画:モデュレックス
漆看板:輪島キリモト 桐本泰一
エントランスサイン:矢部博史(spot frame works)
エントランス什器:デザイン/二俣公一、製作/E&Y
写真:水崎浩志