築80年を超える京町家の改修計画。計画地は古い邸宅や町家が立ち並ぶ住宅密集地で、すぐそばには鴨川が流れる閑静なエリア。建物は比較的コンパクトな木造2階建てで、敷地には表庭と裏庭、建物の両端に2つの小さな庭があった。また、建築当時に宮大工が建てたことから躯体には良質な部材が使われており、築年数の割に状態の良い建物であった。計画では、住宅としての基本的な性能(断熱性能や収納、水回り機能など)を向上・刷新しつつ、2つの庭をどのように扱いながら新旧の要素を一つに取りまとめていくかを考えることにした。そこでまず、1階ではそれぞれの庭に面した縁側を居室として取り込むことを考えた。そして各居室と水回りとの間を通っていた廊下も同様に部屋として利用し、可能な限りリビングダイニングの面積を大きく確保している。また、施主からの希望でもあった和室は、既存の床の間を生かして南側に計画。リビングと和室の間は建具によって解放出来るようにし、庭側に新たにテラスや雪見障子を設けることで、北側の庭から南側の庭まで連続性が失われないよう意識した。また2階も同様に、廊下や縁側を極力無くすことで居室の面積を最大化。壁に囲まれて暗く感じられた階段室の壁はガラス張りに更新し、押し入れをデスク化したスペースと合わせて特に新旧が織り混ぜられた場所となった。そして2階は状態の良かった屋根組が見えるように天井を解体。既存の日本家屋の持つ良さを生かしながらも、機能を新しく整えて空間の広がりを感じられるような住まいを目指した。
計画種別:住居改修
用途:住居
計画期間:2020年6月~2021年3月
計画面積:118.19平米
計画地:京都府京都市
設計:ケース・リアル 二俣公一 下平康一
施工:人見工務店
照明計画:BRANCH LIGHTING DESIGN 中村達基
写真:水崎浩志、N.T.archives