亀の井別荘の土産処(鍵屋)と土間づつきの場所にある、共用トイレの改修計画。山間部に位置する由布院は、朝晩の寒暖差が激しく、冬は九州でも冷え込みの強いエリアである。手洗所は外気にさらされる環境であったことから、施主は寒さの問題を改善しながら改修を行うことを希望していた。
手洗所がある建物は、部分的にレンガタイルで仕上げられたコンクリート壁と、木造の屋根からなるシンプルな作りである。構造の都合上、レイアウトは大きく変えずに意匠や設備の更新を行うことにした。まず、既存のタイル壁は部分的に残しつつ、打放し仕上げになっていた内部の壁を御影石や左官仕上げに変更。野地板があらわしとなっていた天井には、断熱材を入れた上で梁間にルーバーを追加し、全体の質感を上げて適度な意匠性を持たせた。そして設備には、冷温水が循環することで室温をコントロールする、除湿型の冷暖房装置を設置。そのほか、サッシをペアガラスに更新したり、出入口に格子戸を新たに計画したりすることで環境改善を試みた。
また、手洗所へのアプローチとなる土間部分は暗さがあったため、入りやすい雰囲気が必要だと考えた。そこで、アプローチに面する既存の木製建具をガラス戸に変更し、照明を追加することで採光や照度のある空間を整えた。全体として意匠や機能の両面を更新することで、旅館の雰囲気馴染む新たな設えを目指した。
第一期工事:亀の井別荘 湯の岳庵改修
第二期工事:亀の井別荘 五番館
第三期工事:亀の井別荘 七番館
クライアント:亀の井別荘
計画種別:内装設計
用途:手洗所
計画期間:2022年10月~2023年2月
計画面積:37.95平米
計画地:大分県由布市湯布院
設計:ケース・リアル 二俣公一 古村浩一
施工:グレイス
照明計画:BRANCH LIGHTING DESIGN 中村達基
写真:水崎浩志