ヴィンテージの時計を中心に、ジュエリーやアパレルも扱う「ECW SHOTO(江口時計店・江口洋品店)」の移転リニューアル計画。うなぎの寝床のような細長い異形の建物に、性質の異なる2つのフロアを設えた。建物はもともとの幅の狭さに加え、ビル設備の関係で1、2階共に奥に行くほど天井が低くなる構造となっており、計画ではこれを踏まえた配置計画が求められた。
私たちは施主からの機能的なリクエストを踏まえながら、まず1階は、限定モデルなど愛好家向けの製品ディスプレイエリアとして設定した。そして最も奥側のスペースにVIP向けの商談スペースを設け、建物の深さや天井高さをシークレットエリアのような特別感として感じられる空間を目指した。また、床にはネイビーのカーペットを、スチール什器の仕上げにはブルーブラックを用い、空間に落ち着きが生まれるようなカラーリングとした。
一方、2階はより広い顧客向けのスペースとして、1階よりも点数の多いディスプレイケースに加え、時計のリペアカウンター、アパレルアイテムのためのスペースを設けている。カラーリングは茶系で統一し、床には外装材にも用いられるベージュのせっ器質タイルを、ショーケースにはブラックブラウンの粉体塗装を用いた。ケースの取り付けにはオリジナルで製作したブラケットを用い、下地の不陸を調整しながら躯体の表情を活かしている。各フロアの間仕切りにはブルーガラスやブロンズガラスを使用し、閉塞感を避けながら意匠性も持たせた。
店舗はいずれのフロアも予約制の運営が前提とされたが、加えてハード面でもセキュリティの確保が課題となった。そこで1階では、既存ファサードと同じステンレスフレームで内側に二重扉を設置し、L字型にウィンドウを設けることで動線に変化をつけている。さらに2階は、吹き抜けもあり唯一広さを感じられる場所であったことから、可動式シャッターでセキュリティを強化。これら存在自体がこの場所のアイコンになるような機能を設けた。
クライアント:ECW SHOTO
計画種別:内装設計
用途:ショップ&工房
計画期間:2023年6月~2024年1月
計画面積:128平米
計画地:東京都渋谷区松濤
空間設計:ケース・リアル 二俣公一 山本佳奈
施工:TANK
照明計画:モデュレックス
写真:志摩大輔