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玄武洞公園整備計画

大きなうねり模様に、無数のスジが入ったようなゴツゴツした岩肌。六角形の岩の断面が、幾重にも連なる岩壁。兵庫県の日本海側に位置する豊岡市の「玄武洞公園」は、約160万年前のマグマが冷え固まるときに出来た「柱状節理」と呼ばれる特徴的な地形が見られる自然公園である。今回の計画は、長年に渡って景勝地として親しまれてきたこの公園の有料化に伴う再整備計画であった。計画を進める上で最も議論されたのは、「自然の彫刻」とも呼ばれる柱状節理の迫力を、来園者にいかにして感じてもらうかであった。そして、既存の公園の要素をどの程度残しながら新たに手を加えていくか、そのバランスが議論された。

整備の軸となったのは、「玄武洞」「青龍洞」という公園内でも特にスケールのある柱状節理が見られる洞の前に、コンクリートで出来た大きな「基壇(ステージ)」を設けたことである。それぞれの基壇の前方にはベンチを設け、目の前の洞を見上げるように自然と対峙出来る居場所を作った。さらに、基壇やベンチの表面はブラスト加工で荒らして表情をつけ、コンクリート製でありながらも自然と相性の良い仕上げを意識した。公園内をめぐる園路にも同じ素材や仕上げを使用し、曲線や直線を用いて造作することで、自然の有機的なラインとコントラストをつけた。

このような整備の背景には、既存の公園内で見られたいくつかの課題があった。まず一つは、鑑賞する際に目に飛び込んでくる色彩の問題。既存の舗装面の一部は黄色系で整備されており、優しい色調ではあるものの、自然を眺めるには視覚に強い印象を与えていた。そしてもう一つの問題は、各洞への進入を防止するために設置された擬木柵である。公園内では、その一部に落石の危険性があることから、擬木柵を設置することで進入をコントロールしていたが、来園者の安全を確保する一方で、自然を鑑賞するには視覚的な妨げとなっていた。そこで、これらの課題を解決するために計画したのが今回の基壇である。問題があると考えられた既存の柵は撤去し、必要な箇所には基壇と一体的に、出来る限り存在感を抑えた鋼製柵を設けた。鑑賞する際に目に入る造作物の色や素材、その形状を見直すことで、各洞と鑑賞者の間にあった空間的な隔たりを感じにくくし、自然の迫力をそのまま体感出来るような環境を考えた。

今回これ以外に行った主な整備は、公園内の既存施設の外壁色を黄色系からグレー色系に変えたほか、オレンジ色の既製品が用いられていた階段手摺は、既存の支柱を活かしつつ、その色味をグレー系に変更。有料化に伴い新たに必要となった券売所は、必要最小限の大きさで建築し、あくまで自然が主体となるサイズを考えた。また券売所の外壁や、意匠統一のために新たに設置し直したサイン類にはリン酸処理仕上げの金物を用い、コンクリートの基壇と同じく、経年と共に環境に馴染んでいく素材を選定した。そして公園内にある休憩棟では、玄武洞の歴史や地質学的な背景を説明するために展示パネルが設置されていたが、空間の広さに対して情報過多となっていたため、専門家を交えて必要な情報を再整理し、グラフィック的にも読みやすい状況を整えた。

全体として、必ずしも分かりやすい大掛かりなリニューアルを目指さなかった今回の整備。次に活かせるものは活かしつつ、課題がある箇所には必要な更新作業を行った。これまでの良い雰囲気は受け継ぎながら、次の時代でも親しまれるような「再編集」による整備を目指した。

発注者:豊岡市
計画種別:ランドスケープ(再整備)
用途:公園(ジオパーク)
計画期間:2019年12月~2022年6月
面積:約1.47ha
計画地:兵庫県豊岡市
基本設計・全体監修:ケース・リアル 二俣公一 下平康一 柴田りつ
実施設計:キタイ設計、松田一級建築士事務所
施工:土木工事/中川工務店、建築工事/セイワ、建築監理/伸栄
照明計画:BRANCH LIGHTING DESIGN 中村達基
サイン計画・グラフィックデザイン:BOOTLEG 尾原史和 福田拓真
写真:水崎浩志

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