「LORO」「1117」は、一人のジュエリーデザイナーが手がける、性質の異なる2つのブランドである。東京・青山店に引き続き、両ブランドのための2店舗目の内装計画を行うことになった。
場所は大阪中心部に建つ、趣あるビルの1階。もともと、1930年に商社の支店として建築されたその建物は、登録有形文化財にも指定され、外観の石張りやタイル、随所に見られる昭和初期の意匠など、その歴史を引き継ぎながら現在はテナントビルとして運営されている。施主も建物の持つ品格ある雰囲気に惹かれ、この環境を活かすことで、ジュエリーストアでありながらも美術館や博物館にも通じるような、ゆっくりとプロダクトに向き合える場所を作ることが出来ると考えた。
既存の空間は、アーチ状の梁が特徴的な2層の吹き抜け空間で、奥にはH型鋼で支えられたコンパクトな中二階と鉄骨階段がある独特な構成となっていた。そこで私たちは、既存の1本のH型鋼に加え、空間の真ん中を貫くように1本、そしてファサードの鋼材としてさらに1本、新たに2本のH型鋼を追加することにした。
全体は中央のラインを境界に、ディスプレイケースが並ぶ「LORO」のためのスペースと、大判の接客テーブルがある「1117」のためのスペースに分けられている。そして、前述のH型鋼を基準にガラスウィンドウで仕切りつつ、天井はアーチ梁を見せてひと繋がりの空間とした。LOROのための空間は、モルタル床や、オリジナルで製作したスクエアな照明器具、H型鋼を支柱に用いた黒塗装のディスプレイなど、無彩色で洗練された空気に。対して、1117のための空間には米松のテーブルやサイザル敷の床、手漉き和紙を使った照明など、自然素材を使って適度な柔らかさを持たせた。また、中二階の下は天井の低さを活かし、プライベートスペースのようなラウンジとして活用している。
2つのブランドと、歴史ある建物の雰囲気。これらが空間として混ざり合うことで、訪れる人がジュエリーに向き合うときの心地よさのようなものに寄与することを願っている。
クライアント:l’oro
計画種別:内装設計
用途:ジュエリーショップ
計画期間:2024年3月~2024年9月
計画面積:68.95平米
計画地:大阪府大阪市中央区
設計:ケース・リアル 二俣公一 有川靖
照明計画:モデュレックス
施工:ブレイン
写真:志摩大輔