works

  • _DSC6038-HDR
  • _DSC6053-HDR
  • _DSC6116-HDR_2 2 2
  • _DSC6314-HDR
  • _DSC6278-HDR
  • _DSC6236-HDR
  • _DSC6227-HDR
  • _DSC6353-HDR
  • _DSC6332-HDR
  • _DSC6356-HDR
  • _ZST5055
  • _DSC6116-HDR
  • _DSC6413-HDR
  • _ZST5084
  • _DSC6074-HDR
  • _DSC6101-HDR
  • _ZST5076
  • _DSC6389-HDR

石堂橋白つぐ

「石堂橋白つぐ」は、福岡市の御供所町にある日本料理店。博多駅から徒歩圏内という立地にありながら、周囲には古い町並みや寺社が残るエリアにある。施主夫婦は、もともと同じ敷地にあった2階建ての建物を改装して営業していたが、「料理を提供する空間も含めて理想の場所を一から作っていきたい」との思いから検討を重ねた末、それまでよりもコンパクトな平屋を、より質や密度を上げて新築することになった。

敷地は、幅5mほどの細長い形を”くの字”に曲げたような形状で、区画の奥には隣接する寺社の緑が茂っていた。また建て替えにあたり、施主は「町家」や「路地」、「坪庭」などのイメージを持っており、私たちは敷地条件やこれらイメージを踏まえつつ、店内にどのような環境を作っていくか、そしてどのように建物を周囲に馴染ませていくかを考えることにした。

この建物の特徴は、敷地の手前と奥に幅の異なる2つのボリュームを計画し、それらをつなぐように中央にエントランスを設けたことである。これにより、店内までのアプローチには細い路地のような軒下空間が生まれ、さらに入口の脇には坪庭のような場所を設けることが出来た。また、このエントランスが各ボリュームへのハブのように機能することで、店内の動線は最小限に抑えられ、面積効率の上でも有効な構成となっている。

建物の外観は、エリアにかかる景観条例も踏まえて伝統的な素材を使用しつつ、全体はミニマルな印象を目指した。条例で瓦が指定されていた屋根には、軒先に「一文字瓦」と呼ばれる瓦を使用。軒先のラインが真っ直ぐ揃うような納まりとしている。さらに通常の瓦よりも小さな規格の「小瓦」を使用し、建物のスケール感と調和を図った。外壁は、屋根を張り伸ばしたアプローチ部分も含めて軒先まで漆喰で塗り上げ、現代の小さな蔵のような印象としている。そして前述のハブ部分の屋根には銅板を用い、2つのボリュームと明確に縁を切りながら、経年で味わいが出るような仕上げを組み合わせた。

一方、真っ白な外観に対し、店内は左官材の自然な色味に「掻き落とし」と呼ばれる手法で表情をつけた。ヒノキのカウンター上には、和紙を使った行灯をオリジナルで製作し、店内を印象付けながら柔らかい光を拡散させている。厨房はオープンキッチンとし、店内に閉塞感が出るのを避けながら、提供までの時間も含めて楽しめるようにという施主の希望に応えた。カウンター背面には、籐編みの引戸付の大きな開口を計画し、日中には隣接する寺社の緑を借景として緑を取り込み、夜にも引戸が空間の一つの要素となるよう仕上げている。対して、個室スペースには全体的にリネンクロスを張り込み、カウンターエリアと雰囲気を変えつつも、地明かりの照明と合わせて落ち着きある雰囲気を目指した。

計画種別:新築
用途:飲食店
計画期間:2022年4月~2024年10月
構造:木造
規模:地上1階
敷地面積:123.81平米
建築面積:67.41平米 
延床面積:65.49平米
計画地:福岡市博多区御供所町
設計:ケース・リアル 二俣公一 下平康一 内野愛
設計協力・施工:時空建築工房
照明計画:BRANCH LIGHTING DESIGN 中村達基
特注照明:三浦照明
植栽計画:niwa asobi
造園施工:田丸造園建設
撮影:水崎浩志

  • plan